覗いてかじって
自分は不器用なくせに完璧主義で結局半端だと感じる事も少なくないが、好きなものは好きと言えるし、その思いのままかじってみれば自然と知識も経験も手に入る。
そこをどこまで突き詰めるかは仕事でもない限り全く個人の自由だ。
4、5歳の頃、テレビで能面を観た。
恐らく小面と般若であったと思うが、魅せられた。
幼い目には怖くも映ったが、それだけではなかった。
大学では謡曲本を読んだり能鑑賞を行う同好会に所属していた。
そこでの活動の延長で能楽師の方にお会いしてお話を伺えた事は宝物のような時間であった。
能についての本を探して白洲正子の著書を見付け、そこから知ったのが白洲次郎。
夫妻の生き方に憧れを抱いた。
二人が過ごした「武相荘」に行くのが今後の楽しみの一つで、レストラン&カフェも併設されているので、その日のランチはぜひそこでと予定を立てている。
その世界に精通していなくとも、何となく惹かれる気分だけで覗いてみるのも、人生の一端を彩るには充分ではなかろうか。
30代、好きなことをしようと思ったら
人生において大きな別れを迎えた日の夜、今後の人生の前祝いとばかりに寿司を喰らいながら、思った。
「好きなことしよーっと」
さて何をしようか、何をしたいか、というか私の趣味「音楽鑑賞・読書」。
確かに音楽を聴くのもそれについての知識を得るのも、読書も好きではある。
だが、好きが講じて・・といった、別の趣味が欲しかった。
人に趣味を訊かれた時は「散歩も好きです、カフェ巡りとか」と答えてはみるが、その実だらだら歩いて行き着いたカフェで再度だらだらするぐらいである。
好きなことを始めようと思い立ってから3ヶ月。
寿司で一気に過去が吹き飛ぶわけもなく、時折押し寄せては頭をもたげるタラレバに唸り、泣き、‘‘結局は同じ結末であった‘‘に落ち着くという流れを一人で繰り返し、する事と言えば職場と家の往復。
そこから気持ちが徐々に上向き、
・・そういえば、私は茶道に興味があったな・・と朧気に考えていた頃、それをぽろっと話した知人を介して茶道の先生を紹介していただける事になった。
正確には知人の更に知人に茶道を習っている方がいて、その方が通う教室の連絡先を教えていただいたのだ。
早速然るべき日時に連絡し、現住所などを話したところ、私が通い易いであろう教室を紹介していただき、そちらの見学に伺ったのが今の社中との出会いである。
現在、この社中に行き着くまでお世話になった方々には勿論、茶道を学ぶ中で折々に、「ありがたい」と思う事が増えている。
好きなことをしようと思ったら、感謝の日々が待っていた。